ちっちゃ子さんのお話その1
「普段の休日」

たまの丸一日休みも、連日の疲れを取るだけに終わる…
つまり動かず喋らず食って寝るだけ…

「まだお布団出してる〜」

寝巻きのままで布団に埋もれる姿を見て
彼女は軽く小言を漏らす。
すみません、と低い唸るような声で詫びる。

(とってとってとって)

耳を澄ませると、小刻みな足音が世話しなく行き来する。
台所、廊下、庭先etc...とても元気そうで何より。










………あ、また寝てしまったのか…うぅ…
…あれ、目の前にシャツとか色々…

「お休みでも、ちゃんと着替えないとだよー」

廊下の奥の方から声が聞こえる…何故起きたのが分かったのだろう…
そんな事もすぐ忘れ、アメーバのように体を引きずり
もそもそと着替えはじめる。ようやく心身共に意識が戻る感じ。
パジャマ姿と大して変わらないラフな格好で台所へ向かうと
バナナがひと房あったので何も考えずにもぐもぐし始める。
お腹が少し落ち着いて、少しボーッとする。

「…ぃしょっ…ふぅっ…」

寝床の方で声が聞こえる。
あ、布団上げるの忘れてた…いかんいかん…



出来損ないのオモチャのロボットのようにすり足で廊下を歩き
寝床に戻ると、既に彼女が布団を上げ、シーツも洗うために巻き取った後だった。
ごめんよ…とまた詫びを入れる。

「とりあえず、ちゃんとご飯にしないと。バナナだけじゃだめだよ」

…何故バナナを食べていたことが分かっ

「スジの所が口に付いてる」

口の脇に触れると、確かにバナナのスジが付いていた。

「朝ご飯の残りでよかったら、冷めちゃってるけど、とってあるから
 それお昼に足すね」

そう告げてまた小刻みな足音を立てて、シーツや寝巻きや洗濯物を抱えて
廊下を忙しそうに小走りする。

年長者として何か色々と情けない気がする…



そんなことを思いながらボーッとしていると、
さっき洗濯機の方へ向かったはずの彼女が後ろ歩きでトコトコ戻ってきた。


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「もうお洗濯物残ってない?」

まだ寝起きの頭で色々思い巡らし、ハンカチが2枚ほどあったのを思いだした。
スーツのポケットから取り出して、彼女の抱え込むシーツや寝巻きの山の上に載せる。

「お洗濯終わったらご飯にするね」

持ってあげようかと言う前にスケジュールを告げられてしまう。
自分に対して釈然としない…むぅ…





今度、お休みをちゃんと取って、どこかへ行こう。




●おしまい●





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