つり目っ子さんのお話その2
「昔のこと」
それは、私の書斎兼家での仕事部屋での出来事。
用事から帰って、玄関で靴を脱いだ直後に彼女が目前に仁王立ち。
スリッパに履き替えるやいなや私の腕を掴み
無言で仕事部屋に連行される。
パソコンの前に連れられてまず第一声。


←クリックしてアクティブにし、再生ボタンを押して下さい
「この壁紙やめて!」


「この壁紙」とは、彼女の幼少時代に写真館か何かで撮ったのであろう
可愛い着ぐるみを着て記念写真を撮るという良くある写真。
彼女の場合は虎の着ぐるみ…着ぐるみというか虎の顔のほっかむりと
トラ柄ワンピースと言うだけだが、何かとても可愛いので
彼女の古いアルバムからこっそりと一旦お借りして、パソコンに取り込み
スクリーンセーバーになるようにして置いたものだ。
※因みに彼女はパソコンの事に詳しくないので、
壁紙とスクリーンセーバーの違いを把握できない模様。
しかし何故バレたのだろう…家を出る時は電源は切ってあるし
彼女がいる時にはスタンバイにして極力バレないようにしていたのだが…


「秘書さん来てて聞いたのっ」


そんな近くから情報がリークするとは…
しかしあの人は秘書なんて大層なのじゃなくてただの同僚だぞ。


「早く変えて!」


誰にも見せないと言っても既に見られていると言うし、
可愛いから良いじゃないかなんて言えばそれこそ火に油…


「恥ずかしいんだからっ!」


とりあえずここは変えておくことを了承して…


「今すぐ!ここで!」


………うーんまぁ別に出来なくはないけど…


「この写真がパソコンの中から全部消されるまで!」


…パニクっとるんでは…いかんいかん…
一応消しても後で復元できることなんて説明できないし…
まぁ実質ポーズになっちゃうけど、別に消えても
アルバムには入ってるし。


数分経たずに、ファイルの消去は終わる。
少し落ち着いてきた彼女だが、それでも怒りは収まらない。


「絶対誰にも見せないでっていったのに…」


ぼそっと「可愛いのに…」と言うと、ムキになって彼女が言い放つ。


「…中学の時に、クラスの子に見られてすごいからかわれたんだから!
 虎ちゃんとか虎子とか!」


あんまり良い思い出ではないようだ。
…でもそれも多分からかうと言うよりも、可愛く似合っていたから
そういう風に言われていたのではないかと思うのだが…
本人がイヤというのならやめておこう。
試しに「携帯の待受…」と言いきらない間に


「一生口聞いてやんないからね!!!!!!」


了解しました…
結局やぶ蛇で携帯のデータも確認されましたが
そっちにはシークレットフォルダに入っているのでバレなかった(笑)


今でもたまに、今の彼女が同じ服装をしているところを想像して
少し笑ってしまう。それこそバレたら命がないかも知れないけど(笑)





●おしまい●


トップへ