つり目っ子さんのお話その1 「キッチン観察」 |
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早く帰ろうが、遅く帰ろうが小言を言われる。 …まぁそれが照れ隠しなのは分かるが、こちらが慣れてきても 一向に角は丸くならない…そう言うものだと思ってしまえば良いだけか。 「今からだから…時間かかるし……お風呂入っててよ」 エプロンも着けずに台所に向かう彼女の後ろを、こっそりと付いていく。 材料も準備されていて、後は作るだけ。「だけ」と言うと怒られそうだが… 手際も良く、いつものことなので当たり前だが板に付いている。 「………何…」 見てるだけだから、気にしないで〜と脳天気に言うと 少しふて腐れて 「…気になる。気が散る」 ハッキリ言う人です(笑)それでもずっと見てると、 もう無駄だと悟ったのか何も言わなくなる。 冷蔵庫で下味を付けていた魚の様子を見る。 既に切っている野菜も幾つかある。ごぼうはあく抜きのために水にさらしてあるし。 奥にはこれから切る大根やにんじん。 感心してジロジロ見続けること数分。 ![]() ←クリックしてアクティブにし、再生ボタンを押して下さい 「見てるんだったら……手伝いなさいよ…」 ジロジロ見られることに耐えられなくなったのか、 それとも集中できないか、もしくは両方。 できることある? と聞くと彼女はさらりと言う。 「…今してもらいたいことは、あなたにお風呂に入っていてもらうこと」 ハッキリと言う人だ(笑) まぁ、そこが良いところなんだけど。 ●おしまい● |