大人っ子さんのお話その1
「路地にて」
彼女のプランで言う所の食べ歩き。
数々の屋台や出店が立ち並ぶ狭い小路を、ガイドマップ片手に進んでいく。

「おぉ………よし…!」

目の前に広がる様々な屋台を前に、感嘆の声を上げ
そしてその後両手を握り気合いを入れる。可笑しい。

「…?…何笑ってるのぉ〜っ」

見てないようで見ているのが彼女だ。
しかしこう言う時だけではなく、何気ない疲れや変化を
普段から鋭く察知するのが彼女の特徴。
とりあえず、笑ってないよと弁明するも訝られる。

「じゃぁ最初はあの店から!」

実は可笑しいと言ってられるのも最初だけで
彼女は少量ながらも数十件の屋台を巡り、
デパートの試食コーナーを巡っているかのような錯覚すら覚える。

「…はい♪」

二つに割られた豚まんの片方を受け取る。
が、既にこちらは別腹も8分目以上埋まり、余裕が無い。
そんな事を知ってか知らずか、彼女ははふはふ言いながら
美味しそうに食している。

「次は〜」

彼女の中にブラックホールを見た…

「あ、あれっ!」

次の獲物を見つけるやいなや、食べかけの豚まんを口の中に詰め込み
暫くもぐもぐして飲み込むと、次の出店に向かう。

キラキラした眼で見つめるのは、ホルモン料理と言われる
牛や豚の内臓料理。屋台で見るのは初めてだ。

「わぁ〜♪」

幾つかの種類が有るようだが、詳しくは分からないので
どう頼むのかと思ったら、横の看板に「あっさり」だの「こってり」だの
アバウトなメニューがあり、それをお店のおばちゃんが適当に入れてくれるようだ。

「じゃぁこってりふた…」

注文を終えようとした彼女を遮り、あっさりとこってり一つずつで…と言い直す。

「え?あぁ、そっか♪色んなの食べれるしね♪じゃぁそれでっ」

私の意図は全く通じていなかったようだが、それはそれで。
なんなら交換と称して彼女に殆ど食べさせることも出来るだろう…


「わ〜 いただきまーす♪」


何故か爪楊枝が数本刺さっている(予備?)発泡スチロールトレイに
100円とは思えない量の熱い肉片が盛られる。
ちょっと気が遠くなる…少しずつ食べていくが、腸や臓器は噛み応えがあり
見た目もそこそこ有るが、食べ応えがある。つまり危険(笑)



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「ホルモン焼き美味しい〜っ」

因みに今の彼女の台詞は、屋台を過ぎて数十分程後に歩きながらの声である。
彼女がそこまで食べるのに時間を掛けた上に
まだまだ美味しさを味わうことの出来るお腹なのだ。
本当にブラックホール何じゃないかとすら思うお腹をちらりと見やる。


「あーっ、今お腹見た〜っ!
 大丈夫だよっ、キツくなったらワンピース持って来てるもん!」


まだ今の時点でキツくないことの方が驚きなのは気付いていないようだ…
彼女はきっと、この街中の物を食い尽くしていくのだろう…


合掌


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